第2回 米空軍の最高機密 どこにも書かなかった事 F15搭乗記異聞
日本の民間人で初めてF15イーグルに乗った鍛治壮一。彼がどこにも書かなかった米空軍の"機密"を聞いた事がある。
前回載せたとおり、鍛治壮一はF15の搭乗に2台のカメラを持ち込んだ。あらかじめ、米軍から写真は自由に撮っていいと言われていた。ただし、撮ったフィルムはすべて提出するようにという”命令”を受けた。言わずもがなだが、国家機密や軍事機密が写っているフィルムは没収して返さないという意味だ。
で、無事返却されたフィルムの中で、確かに撮った覚えがあるのに消えていたカットが2種類あったという。
一つは没収されて当然だが、F15のコックピット内で前面の計器類を写したカット。これはもうダメに決まっている。我々のような素人でも、計器類を見れば、例えば「最高速度はマッハ○○って言ってるけど本当は△△ぐらいまで出せるんだ」とか分かってしまうだろう。ましてやプロが見たら性能そのほかの情報がダダ漏れだ。
さて、もう一つのカット。これは米空軍の最高軍事機密じゃなかろうか。攻撃訓練用の的があるのだが、ただの的ではつまらないので、ソ連製のミグ25など仮想敵国・ソ連や中国の戦闘機のデザインになっている。鍛治壮一は、その的の中に、米海軍のF14トムキャットが混ざっているのを見つけて写真に収めたのだ。米空軍は米海軍の最新鋭戦闘機を仮想敵国だと思って攻撃訓練の的にしているのか。この写真が世に出たら相当な騒ぎになっただろう。
例えば、航空自衛隊の最新鋭戦闘機F35Aが海上自衛隊の護衛艦の模型を的にして訓練していたら。航空幕僚長が辞任とかいう話にならないだろうか。味方を攻撃する事を英語でfriendly fireという。googleさんに聞いたら「仲良くたき火をする事」とか答えそうだが、少しもフレンドリーでない。あってはならない事だが、混乱の中でヤルかヤラレルかのせめぎ合いをしていたら、そういう事も起きる。だが、旧日本軍などで上官が後ろの部下から意図的に撃たれたのではないかと疑われる事例があるという。軍隊では、日頃から味方を撃つ訓練をしているというのはジョークですまされない。
アメリカの空軍と海軍の仲の悪さは有名だ。さすがに、共同作戦もする友軍を的のデザインにしているのはやり過ぎだが、似たような話はよくある。米海軍がトムキャットのシンボルにしている猫の絵があり、その猫にボクサーのカッコをさせ、リングのロープに寄りかかって立ち、「いつでもかかってこい」と挑発しているシールを作った。これに対し、米空軍がその猫がKOされてロープに絡まっているパロディー版のデザインを作って「君はいつでもかかってこいって言ったじゃないか」と一言添えた。
(鍛治信太郎)